呼吸法
20歳の頃、幸運にもドラムでギャラをもらえるような機会も増え、先輩ミュージシャンの方達に混ぜてもらいながら、自分の実力の無さを痛感する日々。
当然、めちゃくちゃ練習し、時間さえあれば、それこそ一日中スタジオにいた。
20年前はインターネットの情報はほとんど無く、
ドラム練習をするネタを探すには、ドラムマガジンか、確か高いものだと8,000円くらいした教則ビデオを買うしか方法がない時代だった。
まだ若くて貧乏な自分には、金銭的な余裕もなかったので、一番安上がりで済むドラムマガジンを買っては練習していた。
その頃、曲に合わせて叩く練習以外の技術的な部分は、いろんなパターンの練習をしたり、クリックを8分裏、16の裏、3連符の3つ目で感じながらの練習をしたり、シンコペーションブックの読み変えを練習したりしていた。
そういった、よく言われていた練習をする日々を1年くらい続け、もちろんそれなりに上達はしたし、いろんなパターンも叩けるようになった。
でもライヴやレコーディングのプレイバックを聴くと自分の理想とは程遠い、、、
まずダイナミクスの幅が狭い。
迫力がまだまだ足りない。
自分のプレイが気持ち良く感じられないことに思い悩み、凄いストレスを感じていた。
それは上手いプロの方達と一緒に演奏すると如実に表面化するものだった。
「僕はどうしてドラムなんかやっているのだろう…」
実際の演奏、アンサンブルに練習した効果があまり感じられない、、、
とにかく自分の演奏に感動できない、、、
さすがに「これだけ練習してるんだから、これは練習量の問題じゃなく、やり方がおかしいんじゃないか?」
そんな思いが徐々に芽生え始めてきた。
そんなある日、たまたまテレビで村上ポンタさんの演奏を初めて聴き、知らず知らずのうちに引き込まれ、感動している自分がいた。
その頃のポンタさんはまだ若く、ポンタボックスを始めた頃のキレッキレのドラミング。
「音色やタッチが、他のドラマーとは全然違う」
「グルーヴも自分みたいにカチカチしてない」
「ドラムなのにまるでメロディーを歌ってるように聴こえる」
この人のドラミングは根本的に他のドラマーと何かが違う!
この人のエッセンスを少しでも自分に取り入れたい!
そう思い、僕はなけなしのお金を手にポンタさんのビデオを買いに楽器屋さんへ走った。
ビデオを見てみると、スティッキングの説明から始まった。
その時点で、フォームや音色が魅力的で、自分とは全然違う。早速、真似してみよう!と思いながら見続けていると
「呼吸法」
という言葉が出てきた。
ビデオの中で、一番意味不明だったのがこの呼吸法だった。
「呼吸法!?何それ?考えた事もなかったな、、、」
「もしかして、練習しても今ひとつ壁を超えられないのは、その呼吸法のせいなんじゃないか??」
「でも、呼吸法って一体、何をどうすればいいんだろう、、、」
当時、僕はドラムを習ってる人をなんとなく見下しているところがあった。
「自分で練習すればいいだけじゃん!」と。
でも、呼吸法を自分で練習するにしても、どうやっていいのか見当もつかない。
周りの先輩のドラマーさん達に聞いてみても、そんなの考えなくていいよとか、わからないと言う。
本屋で呼吸法の本を探しても、ドラムとどうやって結びつけていいのか全然わからなかった。
ネットがない当時は、そういう情報を調べるのはとても大変な作業で、すぐに限界がきた。
とにかく「今の練習を続けててもダメだ!」という焦りも強くあったし、
「なんとかしたい!」という思いだけが空回っていた。
呼吸法なんてどうしていいのかわからない、でもポンタさんのようなドラミングができるようになりたい!
そんな2つの思いを抱えて、何を練習していいのかわからなくなり、さらに思い悩む日々が始まってしまったのである。
次回へ続く。
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