坂野上 貴宏BLOG(K's MUSIC)

K's MUSICの坂野上 貴宏がドラムや音楽について発信していきます♪

スティックと向き合う!?

今、歴史的な事情で、練習パッドを叩いているドラマーさんが、一番多い時期かもしれない。

 

ちなみに、僕が最も長い時間、練習台を叩いたのは、

K's MUSICの講師になってから経験した「スティックのペア組み」の作業の時だ。

 

K's MUSICで働き始めて少し経った頃、主宰の小野瀬からK'sのオリジナルスティックについて

「今までオレがペア組みやってたけど、これからは坂Pの仕事ね。」と言われた、、、。

 

K's  MUSICのオリジナルスティックのペア組みを僕がやるの!?


それまでスティックを楽器屋さんで買う時も、ある程度のフィーリングでしか選んでなかったし、、、

生徒さん達にお渡しするからには責任もってやらないといけない(>_<)


不安を感じながらも、早速、入荷したばかりの段ボール箱を開けてみると、とんでもない数のスティックが出てきた。


大きな楽器屋さんでも同じモデルのスティックは10~20ペアくらいしか置いてない。

しかし、その時ダンボールには360ペア、720本も入っていた。

こんなに大量なスティックのペア組みを、ちゃんとしたクオリティで出来るだろうか、、、と少々おじけづく。


「やるしかない!」


自分に喝を入れ、作業に入った。


まずは反りのチェックだ。

スティックを一本一本、平らな机の上で転がし、スムーズに転がらないスティックを省くのだ。


反りがあるスティックを徹底的に省いた後は、

スティックを重さ別に分けていく。


同じ形のスティックでも、結構重さに幅があり、この時の入荷分は、確か37gから50gくらいまでだったと思うが、

なんと、1g単位ではなく、0.5g単位で分けてくれと言う。


例えば45gなら、「45.0g~45.4g」の次は「45.5g~45.9g」という感じで分けていく細かな作業、、、


僕も生徒の時からこのスティックを使っていたが、ここまで細かくやっているとは知らなかった、、、。


その作業が終わったのも束の間、本当の大変さはここから始まった。


重さを揃えたスティックを手にとり、練習台を叩きながら、

スティックの「前後のバランス」と「音程のピッチが合うもの」を

探し出してペアを組んでいく。


これを、37〜50gまで、0.5㌘単位でやっていく。


小野瀬から受けた指示は、たくさんあったが簡単なものをいくつか紹介すると


ロゴマークを目安に、どのスティックも必ず同じ場所をもって練習台を叩いてチェックする。

(持つ場所がランダムだとバランスも違ってしまう。)


・力んで叩いたり、スティックに触れ過ぎてしまうと、スティックの振動を妨げてしまい、バランスやピッチが分かりにくくなるので、とことん「スーパー低剛性」でチェックする。(低剛性については、こちらを参照頂きたい。https://ks-music-drum.com/advice/drum-advice/43.php


・下方向に叩くのではなく、上方向に引き上げてスティックのバランスを感じる。

(引きが遅いとチップが持ち上がるので、スティックが平行に見えるのが目安。)

 

まずは軽めのグラムのスティックから手探りで始めてみたが

しばらくは、指の感覚が鈍くて、わかるような、わからないような、、、


恥ずかしながら、スティック一本一本にそこまで向き合った事は今までは全く無かった。

(スティックをあえて逆に持ったり、わざと左右を不揃いにしたりという事はしていたが、左右のスティックをそこまで揃えた事はなかった。)


一度確認したスティックでも、疑心暗鬼になってしまい、もう一度叩いてチェックをやり直してみたり、そんな作業を延々と繰り返す。


諦めずに続けていると、先端側に重心を感じるものや、後ろ側に重心を感じるもの、またはその中間くらい、そういった情報が指先に伝わって、だんだん分かるようになってきた。


途中、何度か小野瀬をつかまえて

「これとこれは近い感じがしますけど、バランスどうでしょう?」と、

確認をしてもらい、自分の感覚がズレていないかもチェックしながら作業を進めていく。


そうやって少しずつペア組みを続けていると、

「バランスが近いけど、ほんのちょっとだけ違う、、、」とか、

「ピッチも、近いんだけど微妙に違う、、、」

そういった事が、だんだん分かるようになってきた。


すると、

「さっきまでの感覚でペア組みしたものは、本当に大丈夫だっただろうか?」


と、不安になってしまい、すでにかなりの数のペア組みしていたものを、また1からやり直したりもしたので、結局、初日は一日中やっても作業が全然進まなかった。


翌日来るなり早速作業に入ると、前日の繊細な感覚を取り戻すのに結構な時間を費やした。


初めてだったせいもあって、脳が受けるストレスは半端なものではない(>_<)


そんなストレスを受け入れながら、数日間かけてなんとかペア組みをやりきった。


だいぶ時間はかかってしまったし、なにしろ精神的にキツい作業だったが、

やり終わってみると「スティック自体の音」を全神経を集中させて聴いたり、「スティックのバランス」を指先から感じたりという行為自体が、自分のドラミングにも非常に役に立つものだったことに気付いた。


だからスティックのペア組みの仕事ができたのはとてもラッキーだったのかもしれない(笑)


後日、生徒さん達がレッスンに来てはスティックを買っていってくれる。

僕としては親が子を送り出す、そんな気持ちになる(笑)


ちなみにK's MUSICでは、これだけ手間暇かけたスティックを「仕入れの原価そのままの価格」で生徒さんたちにお譲りしている。

しかも反っていたり、ペア組みできなかったスティックは、毎回、生徒さんたちに無料で差し上げているので

小野瀬は見た目のお腹もそうだが、実に太っ腹である(笑)

 


それから10数年、、、

 


今は黒木くんがスティックのペア組みの仕事を担当してくれている。


今では、当時よりもスティックのモデルや入荷量も増え、僕がやっていた頃よりさらに大変だ。

そんな黒木くんも生徒さん達がスティックを買っていくたび「子供を送り出すような気持ち」にきっとなっていることだろうと思っている(笑)

 

 


最後まで読んで頂きありがとうございます。

今の世の中の状況で、生ドラムがなかなか叩けないというお話をよく聞きます。

練習台は実際のドラムを叩くより圧倒的につまらないとは思いますが、スティック自体の音を聴くには一番便利と言えるかもしれません。

いつも読んで頂きありがとうございます^_^

坂野上

 

 

 

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